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「カラヴァッジオ」

f0033713_1121931.jpg監督:デレク・ジャーマン
脚本:デレク・ジャーマン
出演:ナイジェル・テリー 、ショーン・ビーン 、デクスター・フレッチャー 、スペンサー・レイ 、ティルダ・スウィントン

 イタリア・ルネッサンス期に活躍した、ミケランジェロ・カラヴァッジオの映画。

「それは、恋ではなかったか」

 カラヴァッジオの劇的な人生に、デレク・ジャーマン(以下、DJ)なりのひとつの解釈を試みた映画。
 ヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞を受賞。ですが、カラヴァッジオの故郷・イタリアということもあって、この映画に対する評価は賛否両論だったそうで。
 「カラヴァッジオを私物化している」と批判もされたそうですが、それも分かる気がします。
 そもそも「カラヴァッジオ」を題材に取ったのは、DJがゲイであるというところもあったのでしょうし、或いはDJの画家としてのアイデンティティもあったのかもしれません。

 そんな彼が題材にとったカラヴァッジオと、その作品ですが。
 彼の絵の特徴は、明暗のはっきりした、非常にドラマティックな絵であること。人物の表情が劇的で、そして聖人たちを扱った絵でありながら、その表現は現実的。有名なエピソードとしては、ルーブルに飾られてある「聖母の死」でしょうか。この絵は教会から聖母の昇天を頼まれたものですが、カラヴァッジオは河に身を投げた女の死体をモデルに描いたとされています。そのため、死んだ聖母は宗教画としてはリアルで、生々しいタッチで描かれています。(映画の中では、死んだレナをモデルにカラヴァッジオが絵を描くシーンがありますね。)結局、その絵は祭壇にそぐわないとして、教会に受け入れられることはありませんでした(彼のそのほかの作品でも、祭壇にそぐわないとして受け取りを拒否された絵があります)。しかし、彼の作品は後世の画家達に多大な影響を与えました。

 さて、映画「カラヴァッジオ」とは。
 ストーリーは、死の間際にいるカラヴァッジオの映像から始まります。そして、そんな彼の側にいるエルサレム。エルサレムは架空の人物であり、この映画のためにDJが作った狂言回しです。死の床にいるカラヴァッジオが思い出すのは、少年時代の思い出、才能を認められたときのこと、教会から頼まれた大きな絵の作成のため、モデルを探していたときであった、ヌラッチオという男のこと、そして彼の恋人レナのこと、そして自身が犯した殺人のこと。
 カラヴァッジオが殺人を犯し、ローマから逃亡したのはよく知られていることですが、原因となったヌラッチオ殺しで、それは愛のために犯された殺人であると解釈し、DJは映画「カラヴァッジオ」を作成したようです。

 ヌラッチオ、レナ、カラヴァッジオとの間で芽生える、奇妙な三角関係。
 カラヴァッジオはレナもヌラッチオも、同等に愛していたように思います。彼は二人をモデルにすることで、インスピレーションがわくのです。そしてそんな不思議な関係を眺める、エルサレムの目。
 やがてレナの美貌は枢機卿の目にとまり、彼女はヌラッチオを捨て、枢機卿の愛人となりますが、翌朝、彼女の死体が河に浮いているのが発見される。レナ殺しの容疑をかけられたヌラッチオを救うため、カラヴァッジオは奔走するも、やがてヌラッチオは驚愕の事実を口にする。「彼女を殺したのは俺だ」と。それを聞いたカラヴァッジオは、ナイフをヌラッチオに突き立てる…。



 エドワードⅡと同じく、コスチューム・プレイでありながら、現代の服装、小道具が使われている作品。しかもそれが画面にぴたりと嵌っていて、素晴らしい。また、主要な出演者たちはほとんどイギリス人ですし、堂々と英語を喋っているわけです。しかしそれを逆手にとって、「イタリア語で言うなら、こうだ!」とわざわざイタリア語で悪口を言うシーンが挟まれてあったりして、逆説的な面白さがある。
 カラヴァッジオの絵画と同じ構図のカットが何度か使われ、レナの死のシーンは「聖母の死」、カラヴァッジオ自身の死は「キリストの死」が使われ、その瞬間、その構図はとまったまま動きません。映画で「絵」を作る、或いは実際の人物を使って絵を描くとはこういうことか、といった感じ。それは下手に登場人物を動かしてストーリーを作るより、印象に残ります。
 多分、セットは全て室内で行われ、一つのシーンはずっと同じ部屋で撮られるのですが、その照明の使い方が独特。窓から光が入る、といったシーンが多いせいか、全体的に画面がちょっと茶色っぽいというか、セピア色というか。背景がほとんど茶色い土の壁なので、余計にそんな印象を与えるのかもしれません。もしかすると、これもカラヴァッジオの絵を意識しているのかな。彼の絵は、明暗が非常にはっきりした書き方なので、モデルたちを構図の通りに配置し、レフ板のようなもので強烈な光をあてて描いたのではないか、と推測されているようです。
 DJ独特の色彩感覚と、カラヴァッジオのこれまた独特な色彩感覚が混ざり合って、構図が非常に面白い。
 また、登場人物たちは、DJが史実を元に想像を膨らませて生まれた人物たちです。元々、DJは「聖マタイの殉教」の中心に描かれている半裸の「魅力的な人物」をヌラッチオとし、そこから話を膨らませていったようです。(それにしても、このヌラッチオにショーン・ビーンを配置するあたり、デレクグッジョブというような感じでしょうか。そういえば、ショーン・ビーンはこの後、「チャタレイ夫人の恋人」にも出てたんでしたっけ?森番役だったのかな?)

 しかしこの映画、DJのDJたる所以が存分に味わえる映画というか。
 彼の作る長編映画はどれも非常に「彼らしい」作品なのですが、この「カラヴァッジオ」でひとつの頂点を迎えたような気がします。
 またスタッフも、美術:クリストファー・ホッブス、衣装:サンディ・パウエル、音楽:サイモン・フィッシャー・ターナー、そして彼のミューズ、ティルダ・スウィントン(その他、ナイジェル・テリー、ショーン・ビーンも、かな)という、チームデレク・ジャーマンが結成され(クリストファー・ホッブスはジュビリーから参加)、以後、「ラスト・オブ・イングランド」、「エドワードⅡ」、「ヴィトゲンシュタイン」等等、彼らが顔をそろえることが多くなります。



 DJ作品を初めて見るなら、とりあえずはこちらがオススメ。
 是非ご覧下さい。




 蛇足ですが。
 カラヴァッジオの「聖マタイの召命」が飾ってあるサン・ルイジ・ディ・フランチェージ教会の横に、小さな本屋さんがありまして。
 観光客目当てなのかなんなのか、カラヴァッジオ絵画集が結構たくさん置かれていたのですが(カラヴァッジオのほかにも、イタリアの代表的な画家の画集がありました)、その中の一つに、巻末にこの映画のことが紹介されていているものがあって、ちょっと嬉しかったり。画集自体はイタリア語で書かれていましたが、即買ってしまった(苦笑)。
 それとサン・ルイジ・ディ・フランチェージ教会にある「聖マタイの召命」は、絵の側にある機械にお金を入れると照明がつくようになっているのですが(教会の中は薄暗い)、私がぽんぽんお金を入れるもんだから、私の後ろに他の観光客がたくさんいました…。今となっては、旅のいい思い出です(苦笑)。
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by azuki-m | 2006-05-28 01:36 | ■映画感想文index

「ダ・ヴィンチ・コード」

f0033713_2571328.jpg監督:ロン・ハワード
脚本:アキヴァ・ゴールズマン
出演:トム・ハンクス 、オドレイ・トトゥ 、イアン・マッケラン 、アルフレッド・モリナ 、ジャン・レノ


 いって参りました、「ダ・ヴィンチコード」。
 初日の夜8時からの回だったんですが、席はほぼ満席。
 土曜日でも、ここまでイッパイなのは、「スターウォーズ・エピソードⅢ」以来かもしれません…。
 さて、ストーリーについては今更言うこともないですし、割愛させていただきますが…。
 何が楽しみだったかって、この映画、ルーブル美術館での撮影、その他イギリスの名所巡りという、観光スポット紹介のような、美しい美術・建造物の映像。
 原作と比べて、その辺の観光スポット映像はかなり割愛されていましたが、それでも楽しかったです。
 パリの映像は、「あぁ、ここ行ったなー」「これ見たなー」というような感じで、ちょっと懐かしかったです。
 私がルーブル美術館を訪れたとき、世間は「ダ・ヴィンチコード」ブームで、モナ・リザの前は黒山の人だかり。ブームがこなくてもそうだとは思うのですが、妙な熱気がありました。
 私は「ダ・ヴィンチコード」をそのときは未読でしたし、そもそも私がパリを訪れたのは、エーコーの言うところの「絶対的な真理」=パンテオンの「フーコーの振り子」と、笠井潔著「薔薇の女」(…当時、ヤブキカケルシリーズを読んでいたのです…)に出てくる、「完璧な美」=ヘルマフロディトス、そしてカラヴァッジオの絵を見たかったからなのですよね…。
 カラヴァッジオの「聖母の死」の前でずーっと立っていたアジア人を、看視員さんが不思議そうに見てました(汗)
 そんなカラヴァッジオの絵を、冒頭、ソニエール館長が床に落とすもんだから、泣きそうになりました。
 ルーブルの館長が、そんなことしないでくださいー!
 でもそのお詫びなのかなんなのか、よく分かりませんが、カラヴァッジオの絵が映画の中で結構使われていて、嬉しかったです。(評議会のシーン、その他随所に彼の絵のポスターが)
 カラヴァッジオの絵はドラマチックなものが多い(題材もそうですが、その描き方も。光と影というか、黒の部分の描き方が圧倒的)ので、小道具として使いやすいのかもしれませんね。


 ま、そんな事は置いておいて。
 前半部分の映像は夜のシーンなので、前半ずっと映像が見難くて…(汗)
 カーチェイス(?)のシーンは目がぐるぐるしました。
 ストーリーも謎解き部分も、かなり割愛されていて、その辺は2時間少しの「映画」にするためには仕方がなかったというところでしょうか。
 なので、イアン・マッケランの存在には少しほっとします。
 彼の妙に堂々とした喋り方、独特の存在感。思わず「ガンダルフ」と呼びたくなってしまいますが、彼がいてくれて本当によかった。映像にちょっとした重みが加わりますね。
 あと、シラス役にポール・ベタニーを連れてきてくれたのもグッジョブです。私は結構、この役、わりとハマリ役だと思っているのですが、どうでしょう。見てる側にさらに痛みを感じさせる演技はさすが。
 そして、音楽がハンス・ジマー。相変わらず、いい仕事をしてくださいます。

 まぁ、ただ、なんというか、この映画には美術品や建築物の映像にかなり期待していた部分はあったので、もう少しじっくり撮ってもよかったかなぁ、というのが多少の不満でしょうか(苦笑)構成上、あれ以上無理なのかもしれない、というのは分かっていますが。
 さらりと流され過ぎてて、今ひとつ、その作品の素晴らしさが伝わり難いような…。それと、歴的建築物の中がかなり薄暗いので、中の美術があまり綺麗に映ってなかったのかな。実際、あんな感じですが…。ちょっと勿体無い。 
 ただ、やはりルーブル美術館の夜の映像は楽しい。あの中はあんな風なってるんですね…。
なんだったか、ルーブルのドキュメンタリー映画がありましたが、借りてみたくなりました。

 全体的に、ストーリーがどうというよりは、パリとロンドンの観光スポットを見るのが楽しい映画でした…。すみません、マニアックな楽しみ方で…。いや、でも、間違ってはいないと思うんですが。ストーリーや謎解きパートは、やはり、小説と比べるものではないと思うので、小説に描かれていたシーンを「あぁ、ここなのか…」と考えながら見ると楽しいと思います。



 蛇足ですが。
 「ダ・ヴィンチコード」の内容にはあまり触れてはいませんが、映画のほうが幾分ソフトな内容になってたかな?ラングドンはティーヴィングの理論の歯止め役というか、そんな役どころも与えられているようです。
 「ダ・ヴィンチコード」のストーリー自体は、語り出すときりがないし、私自身も知識はほとんどと言っていいほどないので、触れることはやめておきますが…。ただ、出演者たちが言っているように、これはよくできた「フィクション」であり、それ以上でもそれ以下でもないというか。或いは、このお話もキリストを巡るお話の中の、一つの見方(視点)でしかないんですよね。
 そういや、最近、新聞に「ユダの福音書」が見つかったとかなんとか書かれていましたが、あれだってキリスト教を見る上での、一つの見方(視点)です。しかし、非常に興味深い視点ではありますが。本物であれば、原始キリスト教の一つの形を知る貴重な資料なんでしょうね。(しかしあの内容…太宰治の「駆け込み訴え」(だったっけ?:汗)のユダみたいだ)  
 また、これを巡ってバチカンからまたなんか言われてるみたいですが、いつものことですね。バチカンの立場としては何か言わなきゃいけないだろうし(笑) 
 後は、宗教団体がソニー製品の不買運動を正面切って始めたみたいですが、これは初めてのことなんだろうか?ありそうなんだけど、あんまり聞いたことがないなぁ…。
 なんにせよ、原作がここまでベストセラーになっていなかったら、こんな大きなニュースにはなってなかったんだろうなぁ…。


※更新をさぼっている間にも、それなりにカウンタが回っているようで、来てくれた皆様に申し訳ない…。
 体はへろへろですが、頑張って更新しますねー!
 
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by azuki-m | 2006-05-21 03:09 | ■映画感想文index

…すみません。

最近謝ってばかりいる今日この頃。
更新サボってすみません…。

とりあえず、嵐はなんとか去りました…。
でも一難さってまた一難。
これから後片付けに追われる日々となりそうです。

さて。
世間ではサッカーW杯の話題がぽつぽつと出て参りました。
私もご多分に漏れず、サッカー騒動に巻き込まれている一人ですが、お気に入りの選手が代表入りを果たしてくれたようで、嬉しい限りです。
(…すみません、私が言っているのはクロアチアの選手たちです…)
後は彼が日本戦でスタメンしてくれれば言うことありません。
日本の地上派で、彼の名前が絶叫される日がくるんだろうか。
それを思うと、今から異常に興奮してしまう自分はちょっとおかしいかもしれません。

しかしその一方で、代表から外れてしまった(或いは外れそうな)選手もあり…。
アルゼンチンの代表選考は、全く関係ないはずの私も、一喜一憂してしまいます。
あんな選手が代表から落ちるって、ある意味羨ましいな…。
でも、彼らをW杯という大舞台で見れないのは、寂しい以外の何物でもないですね…。
私にとって、この4年の日本代表トピックスで何が一番嬉しかったって、アルゼンチン代表(しかも本気モードのメンバーが!)が日本にやってきてくれて、しかも日本のピッチの上をサネッティとクレスポが駆け巡る様子を地上派で見れたことですから(長い…)。
一人一人が大好きな選手なのです。

ドイツ代表は私のお気に入りのDF君が怪我をしてしまったようで(泣)
いつも怪我ばっかりしてる子なのですが、今しなくたっていいじゃないの(泣)
早く回復してね…。
そしてGKはレーマンに決まったそうなので、何をやらかしてくれるかとものすごくドキドキしています。
3、4年前、ドルトムントだったかどこだったか、彼が以前在籍していたチームとミランが対戦したのですが、当時ミランに在籍していたリバウド相手に、華麗なドリブルを披露してくれた事が忘れられません。でも、こんなの氷山の一角だっけか。
…や、今の彼落ち着いているようなので、(面白い)トラブルはないと思うのですが。


……。
日本代表に全然触れてませんね。
いや、本当にすみません…。
彼らも応援してるんですが(汗)


そして、久しぶりの更新がサッカーの話題とは。
…あはははは。
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by azuki-m | 2006-05-13 23:38 | ■その他日記

「ブロークン・フラワーズ」

f0033713_19494359.jpg監督:ジム・ジャームッシュ
脚本:ジム・ジャームッシュ
出演: ビル・マーレイ 、ジェフリー・ライト 、シャロン・ストーン 、フランセス・コンロイ 、ジェシカ・ラング、ティルダ・スウィントン

 こちらも家族を探す男の物語。
 まだ見ぬ息子とその母親を求め、昔付き合っていた女性達を訪れる元ドン・ファンについて。

 この映画のあらすじが、「アメリカ、家族のいる風景」と重なって、私の中でごちゃごちゃになって困った時期がありました(苦笑)。
 似たような題材を取り扱っても、ヴィム・ヴェンダースはサム・シェパードを起用してシリアスな映画に、ジム・ジャームッシュはビル・マーレイを起用してコミカルな映画に。このあたり、二人の色の違いがはっきり出てますよね。
 ま、そんな事は置いておいて。

乱暴に要約したストーリー:
コンピューターで大成功した大金持ち、ドン・ジョンスンは女性関係が盛んでも孤独な元ドン・ファン。しかし付き合っていた女性に家を出て行かれた日、彼にピンクの手紙が届く。謎めいたピンクの紙には、「自称20年前に付き合っていた女性」から、「あなたには19歳になる息子がいる。そして彼は父親を探しに旅に出た」との衝撃の事実が。その手紙を見て喜ぶ、お節介な隣人ウィンストン。「よかったな、父親になれて」。彼はドンにその母親を探しに行く事を提案するが。



 今回の場合は、母親ではなくお節介な隣人・ウィンストンが主人公を導いていきます。
 しかし、この隣人とのやり取りが、本当に面白い(笑)。
 静まり返った(高そうな)家の横で、たくさんの子供が庭で遊ぶ、賑やかな家。(それにしても、いったい何人の子供がいたんだろ:汗)
 探偵小説が大好きなウィンストンの推理が冴えます(笑)。ドンに「女たちのリストを作れ」だの、いろいろ指示を出すのですが、口では嫌がりながらも結局最後は従ってしまうドンが可愛い(笑)。このあたり、多分、ドンも何だかんだと言いながら、期待していたのかもしれませんね。彼女にも去られ、ずっと一人だと思っていた自分に、突然「息子」という存在が生まれる。戸惑いながらも、その存在を本当は嬉しく思っていたのかもしれません。そして最終的に、ウィンストンは「息子の母親探しツアー」(飛行機、ホテルからレンタカーまで手配)を作ってしまい、旅行代理店が作るようなスケジュール表一式と彼オススメのCDをドンに渡す。それも、嫌がりながら、結局は旅行に出かけてしまうドン。 
 なんだかハメられたような気分のまま、過去の女性達の元を尋ねるドン。女性達の住所を全部覚えてたっていうのがすごい。このあたり、本物のドン・ファンですね。単に遊んでいるわけではなく、その相手には常に本気だという(笑)。でもきっと、いつもフラれる方なんでしょうね。

 女性達の反応もそれぞれです。夫に死なれ、少し寂しい生活を送っていた女性からは歓迎されますが、今の生活に満足している女性からは戸惑いしか返ってこない。独立し、昔とは別の道に進んでいる女性からは少し邪険に扱われ、孤独な生活を送るワイルドな女性からは怒鳴られ、彼女の取り巻き(?)に殴られてしまう。昔の恋人がいきなり尋ねてきて、温かい反応を返してくれる女性はあんまりいないと思います。その思い出がすごくよかったなら別として。
 (にしても、女性達を訪ねる間間は結構ダラけてしまい、退屈している観客も多かったように思うのですが、それも次の女性への期待を高めてくれるものだと思えば。)
 ですが、最終的に、特に大きな成果もなく、彼の「家族を探す」旅は終わってしまう。

 結局、謎は謎のまま、映画は幕を閉じます。
 最後に、「彼の息子」と思しき青年は出てくるものの、それも本当に彼の息子かどうか分からない。なにせ、ジャームッシュ自身も彼がドンの息子かどうかは分からないそうですから(笑)
 少し唐突な、皮肉めいた結末(非常に現実的…)でありながら、何かを期待させる結末でもある。ただのコメディで終わらせないところが憎い…。
 観客は、ウィンストンと同じく、推理する楽しみを与えてもらっているのですよね。

 私としては、あの青年は彼の息子だといいかな、なんて(笑)
 だってジャージだし。ピンクのリボンだし。(あの怪しいピンクの手紙が、悪戯じゃないかどうかも分からないんですけどね。)母親としては、2番目の、裕福そうな女性・ドーラでしょうか。
あの家庭なら、「繊細で想像力に富んだ」息子が育ってもおかしくなさそう。


 ストーリーの都合上、画面には様々なピンクが映るのですが、そのたび、画面が華やかでコミカルになります。それにしても、女性達には常に違ったピンクの花を持っていくドンは偉いな(笑)。しかも、その女性によく似合ってる。最後の女性・ペニーにはその辺に生えていた野生の花をむしって持っていくってのが笑えますが。

 それにしても、ティルダ…。いつもいつも、印象の違う役をしてくれるのですが、こんなパンキッシュな役(最後の女性・ペニー役で出演)だとは。今までで一番ワイルドですね。…でもちょっと、出番が少ないよー(泣)。女性達の中で、一番時間が短いじゃないですか(泣)。

 ビル・マーレイの演技はすごい。トボケた感じのポーカーフェイスは本当に見事。ただ椅子に座ってるだけなのに、なんでこんなに面白いんだろう(笑)。二番目の女性・ドーラの家で、彼女の夫と一緒に食事をしているシーンには結構笑えました。
 女優たちも超豪華。そして全く違う個性の女優さん達の共演は非常に面白かった。ドンの女性の好みの広さが分かります(笑)。
 そして、一番最初の女性・ローラの娘がロリータって…(笑)。この娘さん、なぜか脱ぎ癖があるらしく、ドンがいてもお構いなく、素っ裸です。しかも耳元にはおっきなハート型のピアスが揺れています。しかもアイス好き。…「ロリータ」か…(笑)

 あと、ドンの家はなんだか薄暗く、押さえた色調なのですが、ウィンストンや女性達の家の様子と比較してみると中々面白い。ローラの家は母子家庭の力強さと猥雑さがあるし、ドーラの家は白とピンクだけで、まるでモデルハウスみたいな清潔さで、ちょっと無味乾燥。カルメンは仕事場なので、ヒーリングクリニック?のリラックスムード。しかし、ペニーに至っては室内が映されることなく、壊れかけた家の正面と、ゴミの散乱する庭だけ。それぞれの個性が出てて面白いなぁ、と思います。


 見ている間、映画館には笑い声が飛び交い、かなり和やかな感じでした。
 観客はほぼ日本人だったんですけどね。お客さんの反応がすごくよかった。
 かなりコミカルで面白い映画。最後にちょっとした寂しさはあるけれども、大人っぽい、お洒落な映画です。
 ものすごくオススメ。
 どんな人でもそれなりに楽しめると思います。
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by azuki-m | 2006-05-07 19:55 | ■映画感想文index

「青い棘」

f0033713_172638.jpg監督:アヒム・フォン・ボリエス
脚本:アヒム・フォン・ボリエス
出演: ダニエル・ブリュール 、アウグスト・ディール 、アンナ・マリア・ミューエ 、トゥーレ・リントハート 、ヤナ・パラスケ



 これ、私の行きつけの映画館ではモーニングショーで、朝の10時からやっていた映画だったのですが…なんていうか。これを朝から見るのは、正直きっついよ…!!
 しかもこれ、実話が基だそうで。(シュテークリッツ校の悲劇)
 事実は小説より奇なり。
 当時のドイツを仰天させたのは当然かも。日本からも特派員が派遣されたほど、世界の注目を集めた事件だったようですね。

乱暴に要約したストーリー:
時は1927年。ワイマール共和国時代のドイツでのこと。ギムナジウムの学生・パウル・クランツは友人であるギュンター・シェラーに別荘へ招待される。そこにはギュンターの妹・ヒルデも来ていると言われ、その誘いに乗るパウル。彼はヒルデにひそかに思いを寄せていた。だが、ヒルデは彼をまるで相手にしない。落胆した彼は、ギュンターと「幸せ」について話し合う。「真の幸せはおそらく一生に一度しかこない。その後は罰が待つだけだ」。やがて彼らは、「真の幸せ」が訪れた瞬間に死ぬという、「自殺クラブ」を結成するが。


 上の「乱暴に要約したストーリー」を書きながら、なんだかとんでもない話だなぁ、とつくづく思いました。「一瞬の幸せ」しか信じられないというのは、若さがなせる業なのかもしれない。それしか信じられないという純粋さと、経験値の不足。なんだか複雑な気分です。

 それはともかく。
 ヒルデとギュンター、この兄妹が、異常に仲がいい。
彼らは結局、ハンスという男を巡って、どろどろの愛憎劇を繰り広げているわけなのですが、最初は、この兄妹は、ハンスを通して自分達と愛しあうという、一種の近親相姦的な愛なのかしら、と思いました。ま、それも一部あるかもしれないのですが、やがてギュンターは露骨にハンスを求め出し、ヒルデにパウルを押し付けようとしますが、彼女はそんな兄を一蹴します。
 ギュンターの必死さが、ものすごく痛々しい。彼とハンスの仲は既に終わってしまっているのに、彼はそれを認めたくない。一度は認めたはずなのに、いざハンスが目の前に来て、妹といちゃいちゃしているのを見るのは耐えられないわけです。でも、ハンスは結局、「愛される」側に立つ人間だから、ギュンターの苦悩なんか分かりもしない。このあたり、恋愛映画の王道の路線ですが、これがノンフィクションを基にしているといわれると(汗)
 パーティーの後の虚脱状態の中で、事件は起きます。ハンスとヒルデが愛し合うのを、見ていることしかできないパウルとギュンター。彼らはやがて銃をとりますが、パウルは途中で我に返り、「家に帰る」といいますが、全ては手遅れです。ギュンターはハンスを射殺し、パウルの手も拒絶して、自殺する。「これが正しい道だ。悔いはない」


 さて。
 正直なところ、映画の宣伝なんかで、「アナザー・カントリーやモーリスに次いだ新しい友情の形が誕生した」なんとかかんとかと言われているのを見て、少し警戒したところはあったのですが(アナザー・カントリーは少し苦手な映画だったりします。モーリスも、映画より原作の方が私は好きかな…)。
 ただこの映画、映像が美しい。
 別荘の映像なんかは、少し懐古的で、開放感のある映像だと思いました。そしてそれだけでなく、田舎や森の美しさ、そして夜のパーティー。音楽は当時の流行歌が使われ、ドレスを着た華やかな若い女の子たち、男の子たちがエネルギッシュな若さを振りまいています。そして何より、ヒルデを演じるアンナ・マリア・ミューエの美しいこと。
 このとき彼女は16歳だったそうですが、16の、今から大人の女性になろうとする少女の不安定さ、初々しさと色気が混在していて、非常に美しい。画面いっぱいに漂う、小悪魔的な魅力。「ダウン・イン・ザ・バレー」のエヴァン・レイチェル・ウッドにも言ったかと思うのですが、これくらいの女の子が持つ美しさというのは、本当に貴重です。今しか撮れないものだもの。

 また、時代は黄金の20年代です。開放された新しい女性たちの時代。華やかな服に凝った髪形、お化粧で飾る女性たち。
 そんな彼女たちの男に対する考え方は、勿論以前と比べて変化しています。ヒルデたち女学生の、男に対する会話がけっこう露骨で面白い。
「両手にいっぱいの男が欲しい」
「一人の男に縛られたくないの」
 …(笑)。
 でも、こういうの聞くと、あぁぁ、10代の、何も知らない子だからこそ言える台詞だなぁ、なんてちょっと笑ってしまったりもします。
「きみは言い寄る男が本当は怖いんだ。だから先に攻撃する」
 『恋多き女』ヒルデにある男が言う言葉ですが、上の彼女達もまさにそんな感じなのかもしれません。本当は怖いのに、怖くないフリをして、強がっているというか。或いは、怖いからこそ逆に支配下に置きたいというか。
 ま、そんな事は置いておいて。

 
 
 端的に言えば、ワイマール共和国時代のドイツでの、苦すぎる青春物語。
 若いからこそ、悩んで、出口を見つけられずに暴走してしまう。(でも、彼らの「自殺クラブ」や「幸せ」に関する考え方は、変に大人びています。妙に哲学的で、四角四角しすぎてるような。…ドイツ人だからでしょうか:汗)
 しかしこの映画は、後日談としてあげられている、裁判を担当した弁護士さんの言葉に全てが凝縮されている気がします。(映画にそのシーンはありません)

「私は「何が起きたのか」と問いはしない。代わりに、「若さとは何か」と問いたい。そしてその質問にはゲーテの言葉で答えよう。「若さとはワインを飲まずして酔っている状態なのだ」」

見事な台詞ですね。


蛇足ですが。
主役二人が19歳っていう設定にはかなり無理があると思うのですが…(汗)
いやしかし、それ以上に、実際のパウル・クランツの写真も「これで19歳はありえない(汗)」ってな感じです。
…昔の人は、大人になるのが早かったのよね。

さらに蛇足(汗)。
…えぇっと、映画の宣伝とかいろんな場所で、「美青年たちの共演」とかなんとか言われてるのですがね(汗)
そのう、はっきり言って、私はここに出てくる俳優さんたちはちょっと好みじゃないかも…(滝汗)
ダニエル・ブリュールは可愛い顔立ちをしてると思うのですがね、他の二人がですね、ちょっと線が細すぎるかなぁって…(滝汗)
何を美しいとするかは人それぞれですが、アウグスト・ディールを「ヘルムート・バーガーの再来」と言われてしまうと、ものすごく複雑です。…いや、本当に、どうでもいいんですがね(大汗)。
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by azuki-m | 2006-05-07 01:18 | ■映画感想文index

ようやく休みが。

今日は休みが取れたので、外に出てみました。
…が。
楽しいはずのショッピングが、全然楽しくない!!
服とか靴とか、全然欲しくないんですよ。
何を見ても、心に響いてこないというか、なんというか(汗)
映画でもなんでもそうですが、綺麗なものを見て綺麗だと思わなくなったら、かなりまずいです。
忙しいと、心まで貧しくなってくるのね…。
とりあえず、こりゃまずいと思い、ファッション関係雑誌を購入。

で、ですね。
変な話かもしれませんが、私が購入するのは大抵、メンズのファッション雑誌なのですよね。
モデルを見て眼福っていうのもあるかもしれませんが(汗)、メンズの服ってかっこよくて好き。
女性が着る場合のことを考えなくていいので、単純に、芸術として見れるというか。
男性がスーツを着たり、ジーンズをはいたりしたときの、あの姿形が好きです。
それがいい男なら、言うまでもありません(笑)

それにしても、パスカル・グレゴリーがイヴ・サンローランのキャンペーンキャラクターになっているのにはびっくりしました。
相変わらずカッコイイ人です。
今いくつなんだろう(汗)

そして、とりあえず「ブロークンフラワーズ」を見てきましたので、こちらもまた後に感想文を書きます。
お洒落な笑いを提供してくれる、面白い映画でした。
…にしたって、ティルダー!!(泣)
出番…あれだけなんですか…(泣)
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by azuki-m | 2006-05-03 23:59 | ■その他日記

気がつけば。

…またまた一週間放置です…。
ホントにすみません。
最近、カウンタがまたぐるぐる回っているみたいなんですが、世間様はGWだからでしょうか。
私はGWなんてないも同然な感じなんですけど。あはは。

ま、そんなことは置いておいて。
私が更新をサボっている間に、アリダ・ヴァリがお亡くなりになっていて、結構ショックでした…。
「第三の男」も素晴らしいと思うのですが、私にとっては彼女は「夏の嵐」な女優さんです。
f0033713_1451011.jpg

年下の男に弄ばれてしまう彼女は、残酷ではあるけれど、情熱的で、美しい。
最後のラストカット、画面から消えていく彼女の姿とその悲鳴が、ものすごく痛かった。
あの女優さんが亡くなったなんて…(泣)



そして、カンヌ映画祭コンペ部門出品作も決まったようで。
苦手だとかなんとか言いながら、やっぱりアルモドヴァル作品が気になります。
それと、ナンニ・モレッティ作品。
アルジェリアの監督さんの出品があるみたいで、こちらも楽しみ。…日本公開があるかどうかは分からないけど。

何はともあれ、ドキドキします。
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by azuki-m | 2006-05-01 01:59 | ■その他日記


「私は、断固たる楽天主義者なのです」
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