インサイド



「ある子供」

f0033713_2103266.jpg監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演:ジェレミー・レニエ、デボラ・フランソワ、オリヴィエ・グルメ、ジェレミー・スガール、ファブリツィオ・ロンジョーネ

 「息子のまなざし」をアップしようかと思ったのですが、関西では現在公開中でもありますので、こちらを先にアップ。
 よく言われることですが、まるでドキュメンタリーのような映像。(ダルデンヌ兄弟は元々ドキュメンタリー映画出身ですしね)
 「人は変われるのか、そして大人になれるのか」
 ダルデンヌ兄弟が、ブリュノを通して観客にする問いかけです。 


乱暴に要約したストーリー:
ブリュノ(ジェレミー・レニエ)20歳、ソニア(デボラ・フランソワ)18歳。ある日、二人の間に子供ができる。母親として目覚めるソニアに対し、ブリュノの自覚は今ひとつ。それどころか、自分自身がまだまだ子供のままだった。ソニアはブリュノに真面目に働くように言い、失業手当を貰いにいく。しかしブリュノはその人数のあまりの多さに辟易し、ソニアを列に残し、赤ん坊を連れて散歩に出かける。しかしその途中、彼は以前聞いた子供の売買に関する話を思い出し、自分の子供を売ってしまうが。


 ブリュノの行動は、本当に子供です。
 ソニアとのシーンは、ほとんど子犬がじゃれているような感じですし、靴を泥で汚し、白い壁を蹴りつけてその跡を残したり、その場しのぎの嘘で警察をごまかそうとしたり、引ったくりなどで得た少ないお金を、非常にアンバランスな額で使ってしまう。けれど、彼は自分の下で働く子供たちの上前をはねることなく、約束のお金を支払うという、子供ゆえの素直さを持ってもいます。
そんなブリュノですから、ソニアが子供のジミーを連れてきたときは、自分の子供という実感がありません。むしろ、ブリュノ自身が子供であるため、ジミーは恋人ソニアの関心を奪ってしまう、厄介な存在に思えたのかもしれません。

 子供を売るとき、彼は初めて子供を抱き上げ、かすかに躊躇いを覚えますが、売ってしまった後は得た金額の大きさに有頂天で、他の事は見えていません。血相を変えて問い詰めるソニアに、「子供なんてまたできるさ」と言ってしまうブリュノ。ソニアはショックで倒れ、病院に運ばれますが、彼女が警察に全てを話してしまうことを恐れて、ブリュノは子供を取り返そうとします。私は子供を取り返した後、バスの中で子供を抱きしめて座る彼の横顔が、とても印象的でした。
 しかし、子供を取り返しても、ソニアの怒りが収まるはずはありません。退院したソニアを迎えにいっても、彼女はブリュノを拒絶し、アパートから彼を追い出します。

 このときは彼はただ驚くだけでしたが、時間が経つにつれ、その孤独はゆっくりと深くなっていきます。ソニアの元を訪れ、「別れないで」「愛してる」と彼女の足にすがり付くものの、彼女はやはりそんな彼を振り払い、拒絶を貫き通します。こうした過程を経て、ブリュノは「痛み」を知り、そして自分のしたことの重大さに気付いてゆくのです。
 それでも、彼は生きていかなければならず、そのために金を稼がなければならない。ブリュノは、仲間で年下の少年の一人を誘って引ったくりを行いますが、結果は少年だけが警察に捕まってすしまいます。「必ず戻る」。少年だけを残し、隠した金を取りに行く時、そう約束したからか。ともかく、彼はそのまま警察に赴き、自分が主犯であることを告げるのです。

『人は変われるのか、そして大人になれるのか』

 ブリュノの変化は、ゆっくりですが、確実に読み取れます。その変化をしっかりした脚本と演出で見せるダルデンヌ監督の技術は本当に見事。ドキュメンタリーのような自然なタッチでありながら、その演出には無駄がなく、観客の目を意識して作り込まれた映像です。役者たちも、「どこにでもいそうな普通の人々」で、演技をしているとは感じさせない、ものすごく自然体な表情を引き出されています。
 更に、画面上から音楽を一切排し、リアルさを追求しています。感情の高まりは役者の演技と、揺れ動くカメラから察するほかないのですが、それも極力抑えようとしています。しかし、最後の場面では、そんな張り詰めていた感情が、一気に開放されるのです。

 刑に服しているのであろう、ブリュノの元に訪れるソニア。
 沈黙の後、泣き出すブリュノ。ソニアの手を握り、額をあわせながら、二人はただ泣き続ける。

 息を詰めるように見ていたのですが、このシーンで私は大きく息をつきました。最後に提示された希望。ダルデンヌ兄弟は、登場人物を厳しい眼差しで見つめながらも、彼らを放り出すことはしていません。彼らが主人公を10代、20代という設定にしたのは、「まだ人生が決まっていない年齢だから」ということだそうですが、その為に、このラストがあるのでしょう。

 ダルデンヌ兄弟が、この映画によって、カンヌパルムドール2度目の受賞という快挙を成し遂げたのも頷けます。
 ぜひ見て下さい。



 蛇足ですが。
 最後のエンドロールをぼーっと見ていた時に、ジミー役にクレジットされていた子供の数を見て、目を剥きました。いち、にい、さん…。えぇ!?10人以上、いないか??(汗)
 赤ん坊役って、通常、どのくらいの人数で演じるものなんでしょうか。
 今まであんまり意識してなかったけど…(汗)

☆2005年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞
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by azuki-m | 2006-02-23 02:13 | ■映画感想文index
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