インサイド



愛する者よ、列車に乗れ

f0033713_045481.jpg監督:パトリス・シェロー
脚本:ダニエル・トンプソン、パトリス・シェロー、ピエール・トリヴィディク
出演:ジャン=ルイ・トラティニャン、シャルル・ベルリング、ヴァンサン・ペレーズ、パスカル・グレゴリー、シルヴァン・ジャック、オリヴィエ・グルメ


 ようやく、この作品の感想文を書くことができました。
 パトリス・シェローの作品は、「王妃マルゴ」以降すべて好きなのですが、この作品は特に思い入れのある映画です。
 しかしこの作品、今まで見たところ、これ以上はないというくらいばっさり評価が分かれています(笑)
 確かに、はっきり言って、一度見ただけでは何がなんだか分からない(苦笑)。もし一発で分かろうとするなら、事前にこの映画に関する情報を仕入れてからでないと難しい。(ビデオ版なら、裏にある「登場人物関係一覧」を読んでから見ることをオススメします)
 まず、登場人物に対する説明がほとんどない。
 そのくせ、ジャン=バティスト・エムリックの葬儀のために集まる人々の物語なので、登場人物がかなり多い。時々、誰が誰だか判別できなくなったり、誰が喋ってるのかわからなくなることも(笑)
 私にとっては、これ以上はないというくらい、「All is full of love」な映画なのですが。

乱暴に要約したストーリー:
芸術家、ジャン=バティスト・エムリックが亡くなった。葬儀のため、彼を愛する人々は靴と陶器と墓場の街、リモージュ行きの列車に乗る。乗り合わせたのは、甥、その別居中の妻、故人のモトカレたち、最後のカレ、看護士の妻、その娘、友人たち。そして、リモージュには故人の双子の弟が待っていた。ジャン=バティスト・エムリックの死を巡り、結び付けられ、集まった人々だが、その誰もが、人生に困難を抱えていた…。


 端的に言えば、ジャン=バティスト・エムリックの葬儀のために集った人々の群像劇。
 ですが、当然、彼らはそれぞれ自分たちの人生の困難にぶつかっています。
 故人の甥ジャン=マリと別居中の妻クレールはドラッグと縁を切り、夫との復縁を望んでいるし、モトカレの一人だったフランソワは愛と向き合うことを避け、その恋人ルイ(この人も故人のモトカレ)はそんなフランソワの冷静さに落胆させられ、駅で見かけたブリュノ(故人の最後のカレ、フランソワのモトカレ)に一目ぼれし、ブリュノは故人の死と、自分のエイズという病気に打ちのめされている。双子の弟は兄ジャン=バティストに息子ジャン=マリの愛を奪われ、そして全財産も、兄の看護士であったティエリーの娘エロディに譲られてしまう。性転換をし、「女になった」フレデリック(ヴィヴィアンヌ)は、自分の夢が叶わず、そして自分が孤独であるということを知っているが、認めたくない。
 故人をあぁだった、こうだったと言い合い、そしてそれを語ることで、彼の寵愛を得たのは自分だと言い張る人々と、そんな人々を嘲笑うクレール。そこに生まれる苛立ちと怒り。感情は生きている人間の特権であり、その生きている人間を通して、彼らはまた自分たちの人生の道を少しずつ変化させてゆく。列車の中と、葬儀の後の食事では、彼らは故人のことを考えていましたが、ジャン=バティスト・エムリックの家の後半パートからは、彼らはもう故人ではなく、自分自身の生を見ているのです。

「誰にとっても、人生って厄介ね」
 作中、クレールがヴィヴィアンヌに向かって言う言葉です。これが、彼らの全てを表現しているように思います。この言葉の意味を、これほど痛感させられる映画はなかなかないような気もします。

 葬儀が終わり、朝になれば、彼らはまたそれぞれの日常に戻るのです。ただそれも、妻と復縁して歩いて駅まで行くもの、ホテルに恋人たちを残して一人タクシーで帰るもの、妻に去られ、一人ヒッチハイクをして帰ろうとするもの。そして、巨大な家に一人取り残されるもの。一人の死によって繋がった、たくさんの人々の物語は、その葬儀が終わると同時にこうして幕を閉じるのです。

 フランス映画らしく、「愛」に対する拘りは相当なものです。私としては、ジャン=バティストがフランソワに言った、
「僕たちの間にはそれ(愛につきものの困難)がなかった。君にはいつも苛々させられた」
 という言葉がかなり気になったり。フランソワは結局、逃げているだけのような気もします。ブリュノとルイをホテルに残し、一人タクシーで帰りますが、その途中、彼がクレールに声をかけようとする(彼女の前を歩くジャン=マリを見てやめますが)のは、彼は自分と同じ孤独な誰かを探しているように思えました。


 さて。
 冒頭でも述べましたが…この映画、かなり評価が分かれます。
確かに、話も、「編集でカットされたんじゃ(汗)?」と思われる箇所があったり(時間軸がかなりあやふやです。あっちにいた人がこっちにいたり、こっちにいた人があっちにいたり・・・瞬間移動か:汗)、失礼ながら、「本当にこれは正しく訳されてるんだろうか(汗)?」と、字幕に疑いを持ってしまったり(笑)
 しかし、見れば見るほどに味が出てくる映画ではあるのです。
 名言集が作れそうな程充実した会話(字幕に疑いを持ってしまったことは事実ですが:汗)、画面を流れる数々の音楽(特に、墓場で流れるビョークの「All is full of love」とか)、シェロー門下の役者達のかけあいとその演技の素晴らしさ(キャストがありえないぐらい豪華です)、照明の見事な効果。

 脚本は王妃マルゴを手がけたダニエル・トンプソン、パトリス・シェローのコンビ+ピエール・トリヴィディク。王妃マルゴの脚本もよかったんだよね…。

 見た後、「見ないほうがよかった」と思うか、「見てよかった」と思うかは、個人の好みによります。ですが、悪意のない、全てが愛に満ちた映画だと思います。シェローの視線は、どこか優しい。

 蛇足ですが、ヴィヴィアンヌを演じているのは、かのヴァンサン・ペレーズ。
女装して、ついでに胸をちゃんと膨らませるという「体当たり」演技です。彼がハイヒールを履くシーンがあるのですが、その脚線美といったら(ペレーズによると、ちゃんと本人の足らしい…本当に??:汗)。…だから、女である私は、いったいどうしたら(以下略)

※作中の登場人物の名前があやふやで、全部書ききれませんでした。後日調べて、訂正します。

…最近、このちっさいブログにはありえないくらい、カウンタがぐるぐる回っています。
見て下さっている皆様、本当にありがとうございます。(…私が回してるんじゃないだろうな…)
この間言ったことを完遂するべく(2月6日付けブログ参照)、頑張ります…(泣)
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by azuki-m | 2006-02-12 00:50 | ■映画感想文index
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