監督:ポール・グリーングラス
出演:ハリド・アブダラ 、ポリー・アダムス 、オパル・アラディン 、ルイス・アルサマリ 、デヴィッド・アラン・ブッシェ
9月11日。あの日、四機の飛行機がハイジャックされ、そのうち、一機だけが目的地に到着する前に墜落しました。その飛行機が、ユナイテッド93です。
当初から、多分、乗客が抵抗した為に目的地に着く前に墜落したんだろうと言われていましたが、時間が経つにつれて彼らの状況がさらに明らかになって、作られた映画。
その時、あなたは何をしていましたか?
アメリカ同時多発テロ。
その時、私はまだ学生でした。事件が起ったのは夜中だったのですが、それにも関わらず、周囲が騒がしいのでテレビをつけてみると、衝撃の映像が飛び込んできました。
二つの塔に突っ込む、二つの飛行機。
映像を見ながら、あまりにもショックで呆然としたのを覚えています。泣いてたかもしれません。
なんだか変な気分でした。世界に残酷な映像は溢れているのに、何故あの映像にそこまでショックを受けたのか。もしかすると、認識はしていながら、実際には何も分かっていなかった「紛争」「戦争」といったものを、初めて身近なものとして捉えた瞬間だったのかもしれません。
さて、肝心の映画についてですが。
内容は、あの同時多発テロの現場にいた人々を追った一種のドキュメンタリー映画に仕上がっています。
飛行機の中の映像なので、画面はぐらぐらと揺らぎ、乗り物なんかに弱い人は酔いそうな映像です。あまりのリアルさ、緊迫感に、見た後、少し頭がぐらぐらしました。
しかも、キャストのいくつかは、ご本人がされているようで。
よくご本人も出る気になったなと思うのですが、そのせいか、現場の雰囲気がものすごく濃密に伝わってきます。秒刻みで変わっていく状況は、悪くなるばかり。貿易センターに飛行機が突っ込む前から、異常は分かっていたのに、それをどうすることもできなかった人々。
政治や行政に携わる人々は、「そうすべきだ」と分かっていることでも、行動に踏み切れないことがある。今回の場合は、撃墜命令が降りたのに、結局は飛行機を撃たなかった軍部がそうかもしれません(ただ、これは実際に撃っていたらどうなっていたのか…。いいとも、悪いとも、どちらともいえません)。様々な人々が様々な場所に判断を仰ぎ、決裁を待ち、そしてその間にも飛行機は墜落してゆく。
周囲が必死で足掻く中、ユナイテッド93の乗客、乗員達は、自分達で何とかしようと立ち上がります。「彼らは9.11後の世界を最初の経験した人々だった」とは、監督の台詞。
(まぁ、この台詞にはちょっと違和感もありますが…。その言い方をすると、多分、最初に世界貿易センターに突っ込んだアメリカン航空11が、最初の9.11を経験した人々だったと思うのですが)
ただ、この映画自体は、『あの場所であったこと』を描き出し、テロを起こした人間に、怒りをぶつけているわけでもなく、冷静に、場面は進んでいきます。「あの最悪な事態を、なんとか回避できなかったのか?」。
そんな現場の状況は、本当に緊迫感があって、途中からは展開の速さに字幕を読むことを忘れていました。何箇所もの場所を何度も何度も行き来する、ドキュメンタリーちっくな映像の編集力はすごいと思います。
ラストがどうなるのかは、観客全員が知っているのですが、見ている最中でさえ、「助かってほしい」と思ってしまう。しかしそんな願いは当然ながらかなえられず、飛行機は無常に墜落していく。現場の人々の無力感と同時に、観客の方にもちょっとした脱力感が漂います。
「なんとかならなかったのか」。これはユナイテッド93だけでなく、9.11と、その後の世界に対する感想でもあります。
パンフレットには、ユナイテッド93に乗っていた、犠牲者達の紹介があります。一人一人を本当に丁寧に扱われていますよね。
犠牲者には日本人もいました。
世界貿易センターで亡くなった日本人もそうですが、私達日本人もテロの当事者であったことを改めて痛感させられます。
最近、あの9・11の事件が徐々に映画になっていきます。
それらを見るのも、ある意味不謹慎なのかもしれませんが、非常に楽しみです。あの事件を映画にし、そしてそれを見るだけの余裕が、私達にも出てきたのかもしれません。
本当に久しぶりの映画の感想文です。久しぶりすぎて、感想の書き方がよく分からない(汗)
これからも、時間を見つけてちょこちょこアップしてゆきます。