インサイド



「青い棘」

f0033713_172638.jpg監督:アヒム・フォン・ボリエス
脚本:アヒム・フォン・ボリエス
出演: ダニエル・ブリュール 、アウグスト・ディール 、アンナ・マリア・ミューエ 、トゥーレ・リントハート 、ヤナ・パラスケ



 これ、私の行きつけの映画館ではモーニングショーで、朝の10時からやっていた映画だったのですが…なんていうか。これを朝から見るのは、正直きっついよ…!!
 しかもこれ、実話が基だそうで。(シュテークリッツ校の悲劇)
 事実は小説より奇なり。
 当時のドイツを仰天させたのは当然かも。日本からも特派員が派遣されたほど、世界の注目を集めた事件だったようですね。

乱暴に要約したストーリー:
時は1927年。ワイマール共和国時代のドイツでのこと。ギムナジウムの学生・パウル・クランツは友人であるギュンター・シェラーに別荘へ招待される。そこにはギュンターの妹・ヒルデも来ていると言われ、その誘いに乗るパウル。彼はヒルデにひそかに思いを寄せていた。だが、ヒルデは彼をまるで相手にしない。落胆した彼は、ギュンターと「幸せ」について話し合う。「真の幸せはおそらく一生に一度しかこない。その後は罰が待つだけだ」。やがて彼らは、「真の幸せ」が訪れた瞬間に死ぬという、「自殺クラブ」を結成するが。


 上の「乱暴に要約したストーリー」を書きながら、なんだかとんでもない話だなぁ、とつくづく思いました。「一瞬の幸せ」しか信じられないというのは、若さがなせる業なのかもしれない。それしか信じられないという純粋さと、経験値の不足。なんだか複雑な気分です。

 それはともかく。
 ヒルデとギュンター、この兄妹が、異常に仲がいい。
彼らは結局、ハンスという男を巡って、どろどろの愛憎劇を繰り広げているわけなのですが、最初は、この兄妹は、ハンスを通して自分達と愛しあうという、一種の近親相姦的な愛なのかしら、と思いました。ま、それも一部あるかもしれないのですが、やがてギュンターは露骨にハンスを求め出し、ヒルデにパウルを押し付けようとしますが、彼女はそんな兄を一蹴します。
 ギュンターの必死さが、ものすごく痛々しい。彼とハンスの仲は既に終わってしまっているのに、彼はそれを認めたくない。一度は認めたはずなのに、いざハンスが目の前に来て、妹といちゃいちゃしているのを見るのは耐えられないわけです。でも、ハンスは結局、「愛される」側に立つ人間だから、ギュンターの苦悩なんか分かりもしない。このあたり、恋愛映画の王道の路線ですが、これがノンフィクションを基にしているといわれると(汗)
 パーティーの後の虚脱状態の中で、事件は起きます。ハンスとヒルデが愛し合うのを、見ていることしかできないパウルとギュンター。彼らはやがて銃をとりますが、パウルは途中で我に返り、「家に帰る」といいますが、全ては手遅れです。ギュンターはハンスを射殺し、パウルの手も拒絶して、自殺する。「これが正しい道だ。悔いはない」


 さて。
 正直なところ、映画の宣伝なんかで、「アナザー・カントリーやモーリスに次いだ新しい友情の形が誕生した」なんとかかんとかと言われているのを見て、少し警戒したところはあったのですが(アナザー・カントリーは少し苦手な映画だったりします。モーリスも、映画より原作の方が私は好きかな…)。
 ただこの映画、映像が美しい。
 別荘の映像なんかは、少し懐古的で、開放感のある映像だと思いました。そしてそれだけでなく、田舎や森の美しさ、そして夜のパーティー。音楽は当時の流行歌が使われ、ドレスを着た華やかな若い女の子たち、男の子たちがエネルギッシュな若さを振りまいています。そして何より、ヒルデを演じるアンナ・マリア・ミューエの美しいこと。
 このとき彼女は16歳だったそうですが、16の、今から大人の女性になろうとする少女の不安定さ、初々しさと色気が混在していて、非常に美しい。画面いっぱいに漂う、小悪魔的な魅力。「ダウン・イン・ザ・バレー」のエヴァン・レイチェル・ウッドにも言ったかと思うのですが、これくらいの女の子が持つ美しさというのは、本当に貴重です。今しか撮れないものだもの。

 また、時代は黄金の20年代です。開放された新しい女性たちの時代。華やかな服に凝った髪形、お化粧で飾る女性たち。
 そんな彼女たちの男に対する考え方は、勿論以前と比べて変化しています。ヒルデたち女学生の、男に対する会話がけっこう露骨で面白い。
「両手にいっぱいの男が欲しい」
「一人の男に縛られたくないの」
 …(笑)。
 でも、こういうの聞くと、あぁぁ、10代の、何も知らない子だからこそ言える台詞だなぁ、なんてちょっと笑ってしまったりもします。
「きみは言い寄る男が本当は怖いんだ。だから先に攻撃する」
 『恋多き女』ヒルデにある男が言う言葉ですが、上の彼女達もまさにそんな感じなのかもしれません。本当は怖いのに、怖くないフリをして、強がっているというか。或いは、怖いからこそ逆に支配下に置きたいというか。
 ま、そんな事は置いておいて。

 
 
 端的に言えば、ワイマール共和国時代のドイツでの、苦すぎる青春物語。
 若いからこそ、悩んで、出口を見つけられずに暴走してしまう。(でも、彼らの「自殺クラブ」や「幸せ」に関する考え方は、変に大人びています。妙に哲学的で、四角四角しすぎてるような。…ドイツ人だからでしょうか:汗)
 しかしこの映画は、後日談としてあげられている、裁判を担当した弁護士さんの言葉に全てが凝縮されている気がします。(映画にそのシーンはありません)

「私は「何が起きたのか」と問いはしない。代わりに、「若さとは何か」と問いたい。そしてその質問にはゲーテの言葉で答えよう。「若さとはワインを飲まずして酔っている状態なのだ」」

見事な台詞ですね。


蛇足ですが。
主役二人が19歳っていう設定にはかなり無理があると思うのですが…(汗)
いやしかし、それ以上に、実際のパウル・クランツの写真も「これで19歳はありえない(汗)」ってな感じです。
…昔の人は、大人になるのが早かったのよね。

さらに蛇足(汗)。
…えぇっと、映画の宣伝とかいろんな場所で、「美青年たちの共演」とかなんとか言われてるのですがね(汗)
そのう、はっきり言って、私はここに出てくる俳優さんたちはちょっと好みじゃないかも…(滝汗)
ダニエル・ブリュールは可愛い顔立ちをしてると思うのですがね、他の二人がですね、ちょっと線が細すぎるかなぁって…(滝汗)
何を美しいとするかは人それぞれですが、アウグスト・ディールを「ヘルムート・バーガーの再来」と言われてしまうと、ものすごく複雑です。…いや、本当に、どうでもいいんですがね(大汗)。
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by azuki-m | 2006-05-07 01:18 | ■映画感想文index
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