インサイド



「三月のライオン」

f0033713_1283573.jpg監督:矢崎仁司
脚本:宮崎裕史、小野幸生、矢崎仁司
出演:趙方豪、由良宜子、奥村公延、斉藤晶子

 初めて書く邦画の感想文。
 しかしこちらもアップリンクの配給です。
 一時期、見る映画見る映画アップリンクが配給していて、映画の前に何度あのバッテン印を見たことか(笑)

 簡単に言うと、これは兄に本気で恋した妹のお話。




本編紹介文から(この文章がものすごく好きです):
兄と妹がいた。 妹は兄をとても愛していた。 いつか、兄の恋人になりたいと、心に願っていた。 ある日、兄が記憶を失った。 妹は、兄に恋人だと偽り、病院から連れ出した。 記憶喪失の兄は、恋人だという女と一緒に暮らし始めた。 そして、兄は恋人を愛した。 恋人の名はアイス。 氷の季節と花の季節の間に三月がある。 三月は、あらしの季節…

「愛があれば、しちゃいけないことなんて何もない」


 映画は、裸の妹がアイスをなめながら、部屋に一人でいる映像から始まります。その手にはなぜか銃。引き金を引いた後、倒れる妹。…こんな冒頭でしたから、私は、この映画はあまりいい結末になりそうにない、と思ったのですが。(今思えば、あれは一種の「生まれ変わり」を意味する場面だったのかしら)
 二人はもうすぐ壊されるんじゃないか、っていうボロボロのアパートで暮らし始めます。何もない、埃だらけの部屋。ゴミ捨て場から家具を調達し、家に持ち込む二人。まるでママゴトのような生活です。
 妹は、兄がいつ記憶を取り戻すかと心配でたまらない。偶然出会った老夫婦のように、いつまでも一緒にいられたらと望むのです。もし、兄が全てを思い出してしまったらどうなるのか。ですがいろんなきっかけから、兄は徐々に記憶を取り戻していく。
 やがて、兄は兄妹が兄妹として暮らしていた部屋に辿り着く。彼はその部屋で号泣するのです。記憶は戻り、彼は自分が妹を抱いたことを知りますが、時既に遅し。兄もまた、妹を愛するようになっていたのです。
 やがて、妹は兄の子供を生む。



 さて。
 上記のとおり、近親相姦を扱った作品なんですが、全体的に透明感があって、非常に美しい作品。壊れていく建物、散らかった部屋。ここに出てくる建物って、なんだかどれも壊れかけだったり、或いは壊されていたり、古かったりして、完全なものがほとんどありません。壊れかけていく何かは、兄妹の今を象徴したものなのだろうけど。二人のママゴトじみた愛情も、ゆっくりと生々しくなっていき、最後の方は貪るような感じでセックスに雪崩れ込んでいきます。

 それにしても、妹は兄に「アイス」と名乗っているのですが、彼女は常に棒付きアイスの入ったアイスボックスを持ち歩いたり、プレゼントの下着を街のど真ん中でいきなり履き替えてみたり(ホントに嬉しかったんだろうね…)、見知らぬ男とベッドに入ってみたり(兄の服を調達)、その行動が面白い。なんだかものすごく純粋な、子供のような女性です。子供を生んだとき、号泣したのは、嬉しかったからか、悲しかったからか、怖かったからなのか、ちょっとよく分かりませんが。

 「三月のライオン」というタイトルは、ヨーロッパの格言から取ったんだそうですが。この題名を聞いただけで、「見てみようかな」という気分にさせる、とてもセンスのいいタイトルだと、私は思っています(笑)。

 こちらも随分前に見た映画。
ですが、今でも場面場面が思い出せるというか、空虚でありながら、本当に美しく、どこか懐かしさを持った映像に仕上がっている映画。今のところ、邦画の中で、一番好きな作品かも。もう一回見たい…。
 一部では非常に評価されている映画なのですが、いかんせん、知っている人が少ないみたいです…。本当にいい映画なんだけどな。



蛇足ですが。
矢崎監督は、ベルギー王室主催のルイス・ブニュエルの「黄金時代」賞をこの作品で受賞しているのですが、前年度は、デレク・ジャーマン(以下、DJ)の「エドワードⅡ」が受賞しているそうなのですよね。矢崎監督はDJを非常に尊敬していたらしく、この賞を取って、ものすごく嬉しかったそうです。で、一度DJと仕事をしたかったらしく、文化庁の海外派遣制度を使ってイギリスに留学されたとのこと。ですが、ロンドンに行った直前、DJが他界。
矢崎監督と、DJがタッグを組んだら、どんな作品が出来上がっていたのか。ものすごく残念でしょうないです。
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by azuki-m | 2006-04-17 01:34 | ■映画感想文index
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