インサイド



「ラストデイズ」

f0033713_2231511.jpg監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:ガス・ヴァン・サント
出演:マイケル・ピット、ルーカス・ハース、アーシア・アルジェント、ハーモニー・コリン

 ニルヴァーナのカート・コバーンに捧げられた映画。
 ですが、主人公の名前は「ブレイク」となり、映画の中でニルヴァーナの曲は使われていないそうです。…と、いっても、私はニルヴァーナについてほとんど何も知らないのですが。


 さて、どう書くべきか。
 非常に、感想の難しい映画です…。
 なんというか、いろいろな場面をそのまま映し、それを切り貼りし、映画という形にしたような感じです。事実、脚本はたったの11ページだったそうで。
 ニルヴァーナのカート・コバーンに捧げられた映画とありますが、彼の自殺の謎に迫った映画ではありません。なんというか、「ブレイク」の死の間際の二日間を淡々と追っていき、そこに映った映像をそのまま流しているというか。彼の死に理由があったのか、なかったのか、それすらもよく分からず、ただ最後に彼の死体(そして、抜け出していく彼の魂?)がぽんと放り投げだされる。

 映画は、ブレイクが薬のリハビリ施設を脱走し、森をさ迷うシーンから始まります。
 かなり遠いところにカメラが設置されているのか、彼の姿はとても小さい。
 森の中でさまよう彼を見て、なんだか「ポーラX」の森のシーンを思い出しました。撮り方は全然違いますが(なんで思い出したかというと、多分、私があの映画が大好きだからでしょうな:汗)。混乱や、迷路の中にいる(或いは入り込む)主人公を撮るのに、森はいい小道具なようです。
 森の中を横切る河を渡り、彼はようやく「こちら側」に来る(河のこちら側に設置されていたカメラに近づく)。小さかった彼が、ようやく画面にはっきりと映し出されます。それでも彼の全身がようやく画面いっぱいに映ったくらいで、顔までは映してくれません。

 ブレイクの顔を正面からアップで撮ったのは、死ぬ間際の画像くらい。後の映像はどこか遠くからとられたり、後姿だったり、髪で顔が隠れていたり、撮る角度のせいで表情が見えなかったりと、なかなかはっきりと映してくれません。だから、彼がどんな表情をしているのかは、今ひとつよく分からない。
 声はひどく曖昧で、半分夢の中にいるような、虚ろで小さな声で、ほとんど聞き取れませんでした。(字幕さん、ありがとう!)薬の影響かなんなのか、終始ぶつぶつ言ってるんだけど。彼がはっきり喋った(?)のは、歌うときだけじゃなかっただろうか。

 また、一つの映像を別視点で撮ったりと、見ている側としても混乱させられます。どんな意味があって、そんな撮り方をしているのかはちょっとよく分からないのですが、もしかすると、「問題を抱えている人がいるのに助けられない」(ガス・ヴァン・サントの言葉から)周囲の人を切り出して描いているのかもしれません。
 冒頭でも書きましたが、どこまでも淡々とした描き方。「エレファント」の流れを引き継いだ映画ですが、こちらのほうが更に「自然体」に近くなっているというか、なんというか。そのせいか、私の後ろにいた観客さんは寝てましたが(汗)。


 そして、「ブレイク」という人物は、なんだかとても不思議です。
 彼は大成功を収めたロック歌手という設定のようですが、本人はそれを「ただの客観」として捉えている。最初はよかったのかもしれないけれど、次第に自分の置かれている状況に戸惑いを覚えていったのです。
「絶えず誰かが訪れる」
 彼は一人になりたいのに、家にはいつも誰かが訪れる。居候達、電話帳売り、モルモン教の信者、探偵たち。そして、彼の周囲は様々な音が溢れ、気の休まる暇もない。
 そんな彼が逃げ込む場所は温室であったり、楽器であったり。夜中に彼が一人で歌う「Death to Birth」がなんだか悲痛。そして彼は温室で、たった一人で死んでいく。彼が死んだとしても、最期の瞬間に何をしたか、誰もわからない。
 カート・コバーンにインスパイアされて生まれた人物だということですが、リヴァー・フェニックスなど、別の誰かも連想させます。(ガス・ヴァン・サントは親友のリヴァーの死に大きな影響を受けたそうですし)

 人は最後に何を考えるのか。それとも、人が死ぬことに、いつもはっきりした理由があるんだろうかとか。
 人が死ぬということは、こんなにも単純であっけない事なのかもしれません。




 蛇足ですが。
 主役のマイケル・ピットが女装をしているシーンがあるのですが、それがあまりにエロティックでびっくりしました。男性が無理をして女性になろうとしているわけではなく、彼は彼のまま、女性の格好をしているのですよね。男性がぱっと黒いドレスを着る、それが全くグロテスクではなく、ある種の淫靡さを出すことに成功しています。マイケル・ピットは本当に男性的な、いい体格をしていますし、そんな人が女性のドレスを着ることに、違和感がないのもすごいのですが。…いやぁ、こういう、ちょっと倒錯的な映像をさらりと流してくれるガス・ヴァン・サント、グッジョブです。
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by azuki-m | 2006-04-13 02:32 | ■映画感想文index
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