インサイド



「白バラの祈り」

f0033713_344916.jpg監督:マルク・ローテムント
脚本:フレート・ブライナースドーファー
出演:ユリア・イェンチ、アレクザンダー・ヘルト、ファビアン・ヒンリヒス


 ようやく行って参りました、「白バラの祈り」。
 これは第二次世界大戦中、反ナチスを掲げて活動した「白バラ」の紅一点、ゾフィー・ショルの、処刑までの5日間に焦点を絞った作品です。
 ヒトラー政権末期。声高に全面戦争を叫ぶナチスと、それに対し、自由を求め、暴力ではなく言葉で戦った白バラ。彼らはナチスを批判する文書を大量にばらまき、抵抗運動を行っていたが、ゾフィーとその兄は、大学にそのビラを撒いたところを見つかってしまう。
 ゲシュタポの審査官と対面するゾフィー。
「私には良心がある。その良心に従っただけです」
 


 多分、既にいろいろ言われているとは思うのですが、この映画、何が面白いかって、ゾフィーと彼女を取り調べる調査官モーアのやりとりが最高に面白い。手に汗握るとはまさにこのこと。
 最初は無実を主張していたゾフィー(この辺のやりとりも上手い!)ですが、モーアに証拠を掴まれると、一転して反撃に出ます。
 ビラを撒いたことを、「私は誇りに思っている」と。
 それから延々とゾフィーとモーアの舌戦が続くわけです。「私たちは暴力ではなく、言葉で戦う」


「秩序を取り戻すために、我々は戦争をしているのだ。秩序はナチスにしか作れない」
「ヒトラーがいなくなれば、戦争は終わります。そして、秩序も回復する。ナチスの秩序は恐怖政治でしかない」
「教育だ。君は誤った教育を受けている。私に娘がいたら、君のようにはしなかった」
「ガス室に送られる、精神疾患の子供たちを哀れと思うのは、誤った教育のせい?」
「どうせ価値のない命だ」
「彼らにだって可能性がある。どんなことがあろうと、裁くのは神です」
「神は死んだ」

 ちょっとうろ覚えですが。
 気になったのが、彼らの「秩序」への考え方。モーアのような年齢の人にとっては、第一次世界大戦のヴェルサイユ条約の苦い記憶があるのかもしれず、一方、若いゾフィーは民衆の可能性を信じている。
 そして、「法律と人間とを秤にかけ、それが合致しているどうかを見る、それが私の仕事だ」というモーアと、「私には良心があり、それに従う」というゾフィー。
 彼らには彼らなりの正義(モーアには法律と秩序。彼はナチスによる秩序が最も有効であると考える。そしてゾフィーには良心と自由)がある。双方の立場に立ってみれば、それは絶対に相容れない類のものであり、対立が解消されることはありませんが、少なくともモーアは彼女に敬意を表します。まだ若い女性でありながら、自分に立ち向かい、対等に言葉を交わす彼女は、彼にとって「きみは、こんな活動に関わる必要はなかった」ほど、惜しまれる存在だったのです。また、ゾフィーと同じ年頃の息子を持つ彼は、彼女に「協力すれば助けてやる」と譲歩を促しますが、彼女はやはりそれを撥ね退けてしまう。その後のモーアの、なんともいえない表情。
 彼女に背を向け、手を洗う(「この件から手を引く」ことの表れ)彼を見るにつけ、どうしようもないやるせなさと脱力感が伝わってくるようで、こちらも辛い。

 そして、ヒトラー政権の末期、全面戦争が叫ばれる中で、白バラの裁判は異常なスピードで進められてゆきます。
 しかし、ヒステリックに自分を裁いた、フライスラー裁判官に向かって、ゾフィーはこう警告するのです。
「いずれあなたがここに立つことになる」と。


 さて。
 全体として、室内の映像が多いので、息苦しいストーリーが更に圧迫されたような感じになっています。全体的に薄暗いし。ゾフィーの顔が、更に青白く見えます。ただ、その中での光の使い方が非常に印象的。窓から差し込まれる光は、ゾフィーの希望の象徴でもあるかもしれない。時折、室内から外に出るシーンがあるのですが、そこでゾフィーは決まって空を見上げ、太陽をまぶしげに見つめます。そのときだけ、薄暗い映像が明るく開放感のある映像になります。

 また、良心を信じる人間の強さ、死に対する恐怖とそれに立ち向かう強さを見事に演じた、ユリア・イェンチは本当にすごい。地味ながら、しっかりした演技をされる方ですね。今後も目が離せません。捜査官モーアを演じたアレクザンダー・ヘルトも素晴らしい。この二人がいなければ、はたして、この映画はここまでいいものに仕上がっていただろうか?
  
 
 そして、最後の、ゾフィーが兄たちに向かって笑うシーンはなんと言ったらいいか。

「太陽は輝き続ける」
 
 お恥ずかしながら、私は白バラや、ナチスについてあまり詳しいほうではありません。
 もう二度と、彼女たちのような犠牲者を出してはいけないはずなのですが。
 抑圧された世界の中に存在する、信念に従う人間、狂気に走る人間、追従する人間。
 今の私達なら、いったいどのタイプを選ぶのでしょう。




蛇足ですが。
前にも言ったことがあると思うのですが、私ドイツ語の響きがものすごく好きなのです。しかし、討論の言葉として聞くと、なんか迫力ありますよね。…うひゃー(汗)

そしてさらに蛇足。
…ゾフィーのお兄さんと、友人の顔立ち。彫りが深すぎて、独房の中とか、照明のあまりない暗いところでは、目が影になってて全く分かりません…。
ちょっと怖い(汗)


もうそろそろ、映画を見ないのも限界だったので、仕事もそこそこに映画館に行って参りました。
…いやー、改めて、映画っていいなぁ…。
本当に、いいもんだ。
そして、ブログも放置ぎみですみません(汗)。
とりあえず、「白バラ」を急遽アップ。文章が拙すぎます…。すみません…。
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by azuki-m | 2006-04-08 03:27 | ■映画感想文index
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