インサイド



「カルネ」

f0033713_265822.jpg監督:ギャスパー・ノエ
脚本:ギャスパー・ノエ
出演:フィリップ・オナン、ブランディーヌ・ルノワール、フランキー・バン


 「アレックス」のギャスパー・ノエの作品。こちらも一部では熱狂的な支持を得ている監督ですね。
 全編を通した赤に、見ていて気分が悪くなってくるような映画です。ですが、何か惹きつけるものがあるというか。ショッキングなんだけど、目が離せず、結局最後まで見てしまうというか。いろんな意味で、長く心に残る映画ではあります。
 

 端的に言えば、この映画は口のきけない娘を愛した、父親の物語です。
 しかし、その中に様々なショックが詰まっているのですが。 

 冒頭、娘を産んだ女が妊娠の最中、ひたすら馬肉を食べる場面があります(フランスの馬肉消費量は欧州でもトップクラス。また、安価なため、低所得の家庭でよく食べられるのだとか)。女の顔は見えず、その口元(胸元か)が映されるだけ。しかし、このシーンがまた、なんというか、…ある意味ホラーです(汗)。真っ赤な馬肉。それをむしゃむしゃと食べる女。
 ……「食べる」という行為は、ある意味ものすごくエロティックで、そしてグロテスクな行為ですよね。生きることそのものの行為であり、貪欲さを表す行為でもあるという。

 …まぁ、それはともかく、馬肉ばかり食べていた女の腹から口のきけない娘が生まれ、その後、女は娘を残して出て行ってしまう。
 しかし男は馬肉屋の仕事を続け、娘に馬肉を食べさせ、そして黙々と彼女の体を洗う。
 十数年同じ日常が繰り返され、やがて娘の体は「女」になってゆく。

「母親に似てきた」
 次第に美しく、女らしくなっていく娘。彼女の体を洗いながら、男はそう思う。
 娘が何を考えているのかは、さっぱり分かりません。表情が動かないし。目も、なんていうか…意思のない目というか、本当に生きているのか分からない目というか。彼女の顔のアップがほとんどないので、細かい所が分からない。彼女は当たり前のように、父親に食事の準備をしてもらい、体を洗ってもらう。

 そしてある日、外から帰ってきた娘がスカートに血をつけて帰ってくる。初潮が来たのです。これで、彼女は「女」になるための準備を終えたと言えます。しかし、哀しいかな、男親の父親はその事が分からない。娘がレイプされたのだと思い込み、その前の場面で彼女に声をかけたアラブ人の男にナイフを突き立てる。ここでもまた、血の赤です。

 当然のこととして、男は逮捕・刑務所へ。娘は施設へと送られるが、別れの場面で父が娘を抱きしめても、彼女は何の反応もしない。刑務所の中の長い時間、男はただ娘を思い続け、心の中で、娘への愛情と、欲望とを育ててゆく。

 外に出た後、男は自分の店があのアラブ人の男のものとなっていることを知る。行くあてがなく、馴染みのカフェの女主人の元へ。成り行き上、彼は女主人とベッドを共にし、男は彼女のヒモとなる。やがて女もまた、妊娠する。しかし、男は女主人の生む子供の父親になどなりたくない。彼の「娘」はあの、口のきけない娘だけなのです。

 女主人をレイプした後、男は娘に会いにいこうと思う。真っ暗な車道が映ったのち、場面はここで途切れ、続編の「カノン」へと続く展開になっています。 


 大分前に見た映画なので、細部はかなりあやふやです。…あやふやなのですが。
 馬肉の赤、血の赤。初潮のどす黒い血も(あんなところにつくんだろうか、というツッコミはさておき)妙にリアルです。全編通して赤一色といった感じで、見ていて気分が悪くなるほどなのですが、そのために、あの強烈さはかなり頭に残っています。(それにしても、ノエは赤が好きですね…。「アレックス」も、見ていて悪酔いするような映画でしたが。)
 また、音楽が確か、ほとんどなかったように思います。そして、突然、「バン」という効果音とともに場面が切り替わる。物語は男の内面の声だけで語られ、男が直接誰かに話しかけるシーンはほとんどない。男はいつも誰かに話しかけられる役割です。ですが無言のまま、男は彼らを瞬きもせず見つめている。

 「馬」は知性や権威や死などのほかに、性欲だの、動物的欲望だのも象徴しているようです。娘が馬の乗り物(街の片隅になぜかひっそりと。メリーゴーランドでよく見るような、あんな馬です。上の写真にちらっと写っているのがそれです)に乗るシーンがあるのですが、彼女はそこで初潮を迎えるのですよね…(汗)。ある意味、父親の想像は間違ってはいないと言えるのかも。

 なんだかこう、この話は、私の下手な感想文などより、見ていただくのが一番という気がします。(それを言ったらおしまいだー)
 二度と見たくない、というより、二度も見たくないと思うのですが、私はなぜかこの映画が好きです。40分ほどの、非常に短い映画なのですが、記憶に長く残る映画。グロテスクなせいもあるとは思いますが、あの強烈さはちょっと忘れにくいし、「グロテスク」とだけでは片付けられない。
 非常に強烈で、「感受性を傷つける」映画。体の具合がいいときに見る事をおすすめします。身構えながら見てください。



 さて、次は続編の「カノン」の感想文なんかを…(笑)
 これも強烈。ギャスパー・ノエの作品って、リンチ作品みたいに説明しづらい…。
 この方々の作品は、理解するとかどうとかより、その世界に入っていけるかが最大の問題ですよね…。
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by azuki-m | 2006-03-14 02:19 | ■映画感想文index
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