インサイド



「焼け石に水」

f0033713_3331748.jpg監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン
出演:ベルナール・ジロドー、マリック・ジティ、リュディヴィーヌ・サニエ、アンナ・トムソン


 フランソワ・オゾンの作品。
 数ある作品の中で、どれがいいかなー、どれがいいかなー、と悩みはしたのですが、とりあえずこちらをチョイス。
 オゾンの作品は、「8人の女たち」くらいしか知らなかったのですが、オゾンファンの友人から送られた「オゾン映画集ビデオ」を見せられまして。そのついでに、その他のオゾンの映画も見た時期があったのですが、この映画もそんな時に見たんじゃなかったかな。オゾン強化月間…。けっこうしんどかったです(汗)。


 映画は、中年男レオポルド(ベルナール・ジロドー)が、若いフランツ(マリック・ジティ)を家に招いたことから始まります。最初、二人の会話はぎこちなく、そのもどかしさに可愛らしさすら感じるのですが、その後のベッドシーンの後、二人の関係は全く違うものとなっています。
 次の場面で、二人は既に同居をしているようなのですが、レオポルドを喜ばそうとしてか、仕事から帰った彼をやたらに可愛らしい格好で迎えるフランツ(半ズボン…)。しかし、レオポルドの関心は既にフランツから離れています。そんな状況に苦しむフランツ。しかしそんなとき、フランツの恋人であるアナ(リュディヴィーヌ・サニエ)が彼の元を訪れます。彼女とのセックスの後、フランツはレオポルドと別れ、彼女の元に戻ろうと思いますが、そのアナ自身が、レオポルドに陥落してしまう。やがて、レオポルドの昔の恋人・ヴェラ(「彼が喜ぶと思って」、男から女に性転換を行った)(アンナ・トムソン)も現れ、レオポルドとの関係を修復するのです。4人が揃ったところで突然、ダンスシーン(写真の絵です)。しかしこのダンス、フランツだけが妙にテンポがずれています。女二人をベッドに誘い、一人取り残されるフランツ。感じていた孤独は最高潮に達し、やがてフランツは自殺という手段を選ぶのですが、居間に転がった彼の死体を見ても、レオポルドは泣くことも嘆くこともしません。彼はただ、動揺するヴェラに、寝室に戻るよう言うだけです。

「より多く愛する者は、常に敗者になる」。

 映画のキャッチコピーなのですが、この言葉の通り、愛しすぎたフランツが敗者であり、誰も愛さなかったレオポルドは、常に勝者なのでしょう。


 さて。
 エドワードⅡに引き続き、こちらも戯曲の映画化。(ドイツの映画監督、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが19歳の時に作った、未発表の戯曲が基なのだそうです。)
 ですので、映画の構成も、同じく舞台チックです。ストーリーは4幕構成で、起承転結が非常に分かりやすい。また、設定も「家の中」ということで、彼らが外に出ることがありません。だからそのぶん、閉じられた空間の中で起きる室内劇というか(この辺、「8人の女たち」と一緒ですね)、閉鎖性が非常に強くなっています。ですが、「8人の女たち」が外的な要因により閉鎖されたのに対し(内部の人間の仕業もあるけど)、こちらの「焼け石に水」は自分たちが進んで閉鎖された空間(箱)を作り上げているんですよね。
 しかし、「焼け石に水」の箱には、外からの入り口は開かれています。ただ、中から外へ出られないということだけ。こういうのって、恋愛やセックスに似てるんでしょうね。一度入りこんだら、それから逃れることは難しい。悪魔のようなオトコから逃れられない女たち、男たち。

 最後、ヴェラが窓を開けようとして頑張るのですが、どうしても開けれず、項垂れるシーンがあります。逃げることのできない小鳥(まぁ、正直、ヴェラを小鳥と呼ぶには抵抗がありますが:汗)、といったシーンでしょうか。しかし、ここになって、ようやく家の外から中を見る(窓の前でもがくヴェラを撮っている)映像になるのですが、カメラの視点はそんなヴェラからゆっくりと離れていき、やがて彼女は小さくなっていきます。それは観客であり、外から見る者である私達の視線になるのだろうけど、どこか無関心で冷たい視線です。彼女たちのこの先の未来は、絶望的ともいえます。


 フランツやヴェラの気持ちは、レオポルドには全く通用しない。非常に悲惨な話なんだけれど、妙にコミカルでお洒落。ところどころに挿入される音楽や、彼らの行動が、笑いを呼び起こすからかもしれません。
 深刻な題材を、そのままストレートな悲劇にしてしまうのではなく、お洒落な皮肉を被せてしまうところが、オゾンらしいとうか、フランス映画らしいというか(苦笑)。レオポルドの笑い声が聞こえてきそうな気がします。フランツの死は、彼にとって大した意味を持ちそうにありません。



 蛇足ですが。
 オゾン作品によく出てくる、リュディヴィーヌ・サニエちゃん。彼が作る世界に、彼女は必要不可欠です。
 しかし、オゾンの描く「若い女性(或いは少女)」が、私にはどうしても理解不能というか(苦笑)。
 彼の映画で出てくる若い女性は、たいてい、「誘惑者、或いは場の調和を乱す者」というような役割を与えられているような気がします。(尤も、その誘惑者を通して、主人公が成長していく過程が描かれているのですが。)勿論、これは、オゾンに限らず、どの映画にも見られることなんですが。ですが、その…オゾンの描く、彼女たちのあまりのエネルギー、奔放さ、そして無分別さは、聖書の中のイヴを思い出すというか。「次の行動が読めない(汗)」ということもあるのですが、彼女たちが何を考えているのか、全く分からないことが多いのです(他の映画でも、若い人達のエネルギー、奔放さ、そして無分別さを描いたものはたくさんあるのに)。私がオゾンの作品を苦手だと思うのも、この辺に理由があるのかな、とも思います。
 とはいっても、私は彼の最新作を見ておりませんので、あんまりエラソウな事はいえませんが(汗)。「ふたりの5つの分かれ路」のレビューなんかを見ると、上の傾向は、既に過去のものとなっているようですしね。


それにしても、ようやくオゾンの作品をアップできました。
次はなんにしようかな…。
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by azuki-m | 2006-03-11 03:33 | ■映画感想文index
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