インサイド



「キャメロット・ガーデンの少女」

f0033713_1383669.jpg監督:ジョン・ダイガン
脚本:ナオミ・ウォーレス
音楽:トレヴァー・ジョーンズ
出演:サム・ロックウェル、ミーシャ・バートン、キャスリーン・クインラン、クリストファー・マクドナルド 、ブルース・マッギル


 この作品も、ようやく感想文がかけました。
 現代の御伽噺とでも呼べる作品。非常によくできた脚本なので、最後の展開にはかなり驚きました。

乱暴に要約したストーリー:
高級住宅地・キャメロット・ガーデンに住む空想好きの少女デヴォン(ミーシャ・バートン)。彼女の父親は選挙を控えており、知名度を上げるため、近所にクッキーを販売するよう娘に言う。しかしデヴォンはクッキーを配らず、キャメロット・ガーデンを出て森の中へ。その中に建つ、古びた一軒の家。彼女はそれを御伽話に出てくる怪物・「バビヤガ」の棲家だと思い込むが、そこはキャメロット・ガーデンで芝刈りを請負う、トレント(サム・ロックウェル)の家だった。キャメロット・ガーデンから疎外されるトレントに、彼女は自分と同じ何かを感じ、彼に近づく。はじめは彼女を邪魔に思っていたトレントも、デヴォンを徐々に受け入れてゆくが、周囲はそんなトレントに非難を目を向け始め…。

 
 ストーリーは、まるで箱庭のように美しく整備された町、キャメロット・ガーデンから始まります。画面に映るのは、ぽつりぽつりと並んだ大きな家、その家家の間に広がる美しく手入れされた芝生。そのほかには何もありません。なんというか、自然を感じさせない、全くもって人工的な町です。なんだか、よくできた箱庭の中にいるみたいな。町は大きな塀に囲まれているので、余計そんな感があります。

 主人公のデヴォンは幼い頃に心臓の手術を受けたことや、同じ子供の話についていけない(彼女の話し方はかなりゆっくりめ)事もあって、自分の内に閉じこもる、空想好きな少女です。しかし、彼女は両親を含むキャメロット・ガーデンの人々の欺瞞を見抜き、彼らを軽蔑しており、自分と同じように「キャメロット・ガーデンの外にいる」トレントに、強い興味を持ちます。

 トレントはキャメロット・ガーデンとは対極の、異質な人間でした。(キャメロット・ガーデンにはその外にも余所者(貧乏人)である、新聞配達夫なども、彼と同じ立場の人間として出てきます)
彼は、新しいシャツを買って外に飛び出したいと思うけれど、そんな願いは叶うはずがないということを知っている。自分が「芝を刈る側の人間」であり、疎外されていることも知っているけど、そんな状況も半ば諦めている。けれどそんな自分に時折ちょっかいを出す人間がいて、彼の感情を逆撫でる。

「何が欲しいんだ」

 だから彼は、デヴォンにも、そして彼への歪んだ思いのため、抱執拗な嫌がらせを続けるショーンやブレッドにも、そう聞くのです。

 そんなトレントの前に突如として現れたデヴォンを、最初彼は苛立ちながら、やがて徐々に認めていく。「レオン」のような、子供のように素直な大人ではなく、育ちきっていない部分はあっても(突如橋の上から素っ裸で飛び込んだり、デヴォンと一緒にトラックの上で踊りだしたり。そもそも、デヴォンという子供を受け入れる事ができたのも、彼に残っていた子供の部分が一つの原因だったのかも)、彼はやはり大人です(彼女と付き合うことも周囲の目を非常に気にしているし、車に轢かれ苦しむ犬を殺してあげたり、彼女から預かった銃から弾を抜いて返したり)。
 最初、アクションを起こすのは常に彼女で、彼はそれについて行きます。大人である彼には、彼女ほどの大胆さはない。けれど、最初はそんなデヴォンに辟易しながらも、子供である彼女と最後まで真摯に向き合っていく。話が進むにつれ、(彼女の影響もあってか)、彼は自分から動くことを覚えていくのです。

 二人の間には、友情とも、愛情ともつかない、不思議な感情が生まれていきますが、これがラヴストーリーになるのを食い止めたのは、彼の性格によるところも大きかったんじゃないかな。デヴォンはちょっと分からない。子供の激しさと、純粋さ。けれど、「女はいくつであっても女」という格言の通り、彼女はトレントに『親友』への愛情以上のものを抱いていたような気もするし、『お友達』を守ろうとする、子供の必死さの為でもあるような気もするし。10歳という年齢がまた微妙なところなので、なんとも判断がつかないのですが。

 しかし彼女は、結局、トレントを守るために、娘に悪戯をしたと思い込む父親と、飼っていた犬をトレントに殺されたショーンから暴行される彼を助けようと銃を持つのです。
 (しかし、このあたり…。元々はデヴォンが自分で引き起こした事件ではあるのですが、大好きな犬の死を間近で見てしまったら、10歳の子供にはショックでしょうし(可愛がっていた犬の死を見たショックで、彼女はパニック状態になり、それを見た母親はトレントがデヴォンに悪戯をしたのではないかと思い込む)。ちょっと自己中心的な感じもするけれど、子供の行動としては、まぁ、分からなくもない。しかし、彼女の父親。金持ちのブレッドが娘に悪戯をしたことは信じなくても、どこの誰とも分からないトレントが娘に悪戯をしたというのなら、簡単に信じてしまう。彼女の父親にとっては、トレントなんて「何を企んでいるのか分からない」貧乏人でしかないんですよね)

 彼を助けるため、父親を銃で脅し、財布を奪い、トレントに渡すデヴォン。
「自分が撃ったことにされる」と躊躇うトレントに、「逃げて。新しいシャツを買って」と彼女は言います。そして、彼らを追い詰める全てのもの、「バビヤガ」から彼を逃がすために、物語りにならって、彼女はタオルと櫛も渡すのです。

 最後のシーンは、彼女の想像だったのか、それとも現実に起きた出来事だったのか。
 「バビヤガ」から逃げるトレントの後ろに、川がせりあがり、巨大な森が彼の後ろに生え。そうして、彼は「バビヤガ」から逃げ、二度と戻らない。
 けれど、彼の家は、彼女の手の中にあり、彼女はいつまでも彼を感じることができる。
リボンが結わえられた木の上にいる彼女は、ひどく幻想的で美しい。彼女の語る物語が終わると同時に、この映画も終幕を迎えるのです。



 まず、最後の展開は、かなり驚きました。なぜ、この映画がファンタジーと呼ばれるのか分かった気がします。しかし、よくできた脚本ですし、登場人物の一人一人がよく練り込まれていると思います。映画の中にもう一つのお話(御伽話)をからませるのもなかなか面白い。作中出てくる「バビヤガ」の物語は、いろんな国の昔話でよく見るお話ですよね。主人公が怪物に追いかけられ、その途中で何かを投げることにより、怪物を踏み止まらせる障害物が出るという。
 また、音楽もどこか懐かしいような、物悲しいような、けれど耳に残る旋律が多く、私はかなり気に入りました。映像も美しいものが多く(キャメロット・ガーデンの映像、森の中の二人、木に結わえ付けられたリボンが翻り、その中に座るデヴォン。特にこのラストは本当に印象的)、頭の中に残ります。そして、私的収穫は、サム・ロックウェル!このときの彼はものすごく好きですね。今見返すと、なんか照れちゃって見れないかも(汗)


 現代における御伽話。或いは奇跡。
 かなりマイナーな話ではありますが、ものすごくオススメの映画です。



蛇足ですが。
ミーシャ・バートンの現在に、ちょっとしたショックを受けました…。
なんなのよ、あの変な恋人は…(泣)
別にオーランド・ブルームとできてくれとは言いませんが、もうちょっとなんとかならなかったのか…(泣)。個人の趣味なんで、いいですけど(泣)。本人が幸せなら、いいですけど(泣)。
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by azuki-m | 2006-03-03 01:42 | ■映画感想文index
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